臼井桂子
静岡てんかん・神経医療センター神経内科
てんかんは「大脳神経の過剰な発射により反復性の発作を生じる慢性の脳疾患」と定義され、有病率が0.5~1%、つまり日本で100万人に達する頻度の高い神経疾患だ。
てんかんは小児に多い疾患という印象があるが、年間発症例のうち、15歳~64歳が約40%、65歳以上の発症が20%を占める。また、脳血管障害の後遺症として、てんかんを発症する場合もあり、人口の高齢化が進む現状、症例数はさらに増加する。
てんかんの診断は必ずしも容易ではなく、「発作=てんかん」という単純な図式は成立しない。そこで、確実な理解のために、実際に長時間ビデオ脳波モニタリングで捕捉されたてんかん発作を供覧しつつ、発作型分類、てんかん焦点推測を行う上でポイントとなる特徴を解説する。
てんかんは発作時のみ臨床症状が出現し、発作間欠期には神経学的異常所見が認められない場合が多い。てんかん発作には多様な症状があり、てんかん焦点を推測する際に発作症状が有力な手がかりとなる。一方、発作を起こす疾患はてんかん以外にも存在する。誤診を避けるために、一般的な診断手順は次のようになっている。
1.急性反応性発作(電解質異常、代謝異常など内科的疾患、脳腫瘍、脳炎などの急性中枢神経疾患)、あるいは非てんかん発作(失神、睡眠時行動異常、不随意運動、一過性脳虚血発作、片頭痛、心因発作など)の除外。
2.臨床症状と脳波所見に基づく発作型の診断。
3.発作型分類および画像所見等の検査による詳細の特定と、有効な治療法の選択。
外科治療で高い治療効果が得られる内側側頭葉てんかん、内服薬が著効する特発性全般てんかんなどは確実に診断する必要がある。また、発作型によって有効な抗てんかん薬が異なることから、発作型を的確に分類することが重要。まずは全般性と焦点性に分ける。
目の付け所は、感覚徴候の有無(幻視・臭い・幻聴など)、運動徴候、自律神経(瞳孔・脈など)、高次脳機能(言語など)、意識、両側に進展するか、発作後覚えているか、回復時間、など多岐にわたる。
以下、症例提示。
てんかん発作を診察室で観察できることは極めて稀。また、30分間程度の外来脳波検査で発作が記録できることも少ない。臨床現場においては、作時臨床症状を詳細に聴取し、他の検査所見と合わせて診断することになるが、診療者が的確な質問をすることによって初めて正確な情報が得られる場合がほとんど。患者さんの家族に発作時の様子を画像に残してもらう(スマートフォンが便利な時代になりました)のも、有効な診断手段。
フロアから。けいれん性失神との鑑別は?失神でけいれんを起こすのは、一時的な除脳硬直になった状態と考えられる。筋肉痛が残ることが多い。
発作時健忘が高齢者に起こると?物忘れ外来を受診することも多い。発作で失われた記憶は戻らないので。
当院のてんかん診療に対するスタンス
「物忘れ外来」を標榜している以上、認知症と誤診されやすい高齢発症てんかんは、ぜひ押さえておきたいポイントの一つ。実際、奥さんが「認知症疑い」とのことで連れていらした80歳代の男性が、最近いらっしゃいました。「時々ぼーとして答えないことがあるし、その時のことを覚えていないから」というのですが、もうお分かりですね。側頭葉てんかんです。この方は、テグレトールの少量投与で、完全に発作がなくなっています。
しかし、ご覧のごとく、てんかん発作は様々。したがって、てんかんが疑われる場合は、聖隷浜松病院のてんかんセンター、場合によって静岡てんかんセンターをご紹介し、診断を確実にしていることが多く、その後逆紹介で継続診療をしています。現在、新規抗てんかん薬が次々と上梓される最中。併用でなければいけない、というおバカなルールを誰かが作ったので、大変使いにくいですが、以前よりよほど治療の選択肢が増えたのは間違いありません。てんかん治療も新時代を迎えつつあるのです。
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物忘れ(認知症)外来
頭痛外来(6歳以上の小児を含みます)
パーキンソン病とその類縁疾患
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恐れ入りますが、初めての方は、予約無しで、お早目の受診をお願いいたします。
お越しになる際は、必ず、時間に余裕をもっていらしてください。
認知症の診療には、多くの時間と手間がかかるからです。
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2017年から、1時間当たりの予約患者さんの数を減らし、以前に比べると、はるかに待ち時間は少なくなりました。
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