●クモ膜下出血SAHの頭痛、2割は非典型的。
前駆頭痛0~43%。
SAH診断の遅れ、数~25%あり。
過去10年で、歩いて外来に来たSAH患者119人。そのうち20%は初診では診断できなかった。CT 6時間以内なら100%。7日後では50%陽性。MRI FLAIRで5日以内なら100%。腰椎穿刺。
●可逆性脳血管攣縮症候群RCVS SAHやprimary angiitis of central nervous system PANCSを除いた、頭痛と可逆性の脳血管攣縮をともなう病態。
雷鳴様頭痛は85%。
女性に多い。
未破裂動脈瘤クリッピング、脳外科のOpや妊娠、薬剤*の投与に関連することも。
セロトニン関連薬 | SSRI、トリプタン製剤 |
Illicit drug | 大麻、コカイン、エクスタシー、アンフェタミンとLSD |
エルゴタミン類 | エルゴタミン、メテルギン、リスリド、ブロモクリプチン |
Sympathomimetic
drug |
エフェドリン及び関連のダイエットピル |
免疫抑制剤 | タクロリムス、シクロフォスファミド、インターフェロン-α |
その他 | ニコチン・パッチ、ginseng(薬用ニンジン)、インドメタシン、不節制な飲酒、経口避妊薬 |
●CSD大脳皮質拡延性抑制と脳血管ズパズム
Spreading depolarization 脱分極の持続でエネルギーを失う
↓
CSD 虚血
↓
脳血管攣縮に進んだり進まなかったり。いずれにせよ虚血は生じている。
フロアから
●脳梗塞の頭痛 8%程度。脳底動脈系で多い。
●巨細胞性動脈炎GCA 側頭動脈炎。60歳以上の新規発症持続性頭痛、一過性黒内障*、頭皮動脈の圧痛と腫脹。
突然、片眼だけに「黒いカーテンがおりてくるように」、「白っぽく霧がかかるようになって」、「黒い水平線が上がってくるようにして」、「写真のネガのような見え方のようになって」、そして目が見えなくなってしまうというような症状が出現、このような症状が2~3分の間続いて、普通、数分以内、長くても20分位で元の見え方に戻る。
眼球に行く動脈(眼動脈)は、脳に行く動脈(内頚動脈)が一旦頭の中に入って、しばらく走ってから、その後、枝分かれして、再び頭の外に出て眼球に向かいます。要するに眼動脈は枝分かれした脳の動脈のうちの1本。一過性黒内障は、首から脳に至る内頚動脈、そして、その内頸動脈から枝分かれして眼動脈を介して眼球にいたるまでの血管系に問題が起こり、そのせいで眼に必要な量の血流が供給されなくなってしまった際に生じる症状。この原因としては、ひとつは動脈硬化が起きて動脈が狭くなっている部分に血栓〈けっせん〉(血液の固まり)が形成され詰まってしまった場合、あるいは血圧の変動(血圧の低下)などをきっかけとして、狭くなった部分より先に十分な血液が流れなくなった場合。もしくは、動脈硬化が起こって狭い部分が出来ていますと、狭くなった動脈の壁の部分に血液の塊(血栓)が出来やすくなります。そして、なにかの拍子に、内頸動脈~眼動脈にかけての部分で出来た血栓が血管の壁から剥がれ、塞栓となって先の方の動脈の方に流れて行って、そこを詰まらせてしまう場合などがあります。
この一過性黒内障は、内頚動脈系の一過性虚血発作(TIA)のひとつで、脳梗塞の警告症状と考えられています。例えば、内頚動脈の壁に出来た血栓の一部が剥がれて眼動脈の方に流れて、そこが詰まってしまいますと一時的に目が見えなくなってしまうのです。一方、この剥がれた血栓が脳の動脈の方へ流れて行って、その動脈を詰まらせてしまいますと半身の麻痺や、しびれ、言語障害が起こるというわけです。そして、完全に詰まらせてしまった場合は脳梗塞になってしまうことになります。
●頸動脈・椎骨動脈解離 通常片側性頭痛。頭痛は55~100%見られる。有痛性のホルネルや耳鳴が突然発症したら、頸動脈解離の可能性が高い。内頸動脈解離では患者の90%が、障害血管と同側の80%に眼窩、顔面、頸部の疼痛を訴える(有痛性Horner症候群自体は28%)。
41M、突然の頸部痛で発症した例。椎骨動脈解離。
表 Horner症候群の臨床症状
同側の軽度(通常2mm以下)の眼瞼下垂 |
下眼瞼の上昇(upside down ptosis) |
眼球陥凹 |
患側縮瞳による瞳孔不同 |
散瞳の遅延 |
輻湊異常(振幅の増大または麻痺) |
患側顔面の無汗症 |
先天性では虹彩異色症 |
*
内頚動脈・椎骨動脈解離における頭痛・頚部痛
Headache and neck pain in spontaneous internal carotid and vertebral artery dissections.
著者: Silbert PL/Mokri B/Schievink WI
出典: Neurology/ 45巻, 8号, 1517-22頁/ 発行年 1995年08月
エビデンスレベルIV
目的
内頚動脈解離と椎骨動脈解離の頭痛の程度、部位、種類ならびに頭痛に随伴する症状を調べる
研究施設
米国のMayo Clinic(Neurology and Neurosurgery)
研究期間
1970年から1990年
対象患者
内頚動脈解離患者135人と椎骨動脈解離26人
介入
診断はすべて脳血管撮影で行った
結果
動脈解離が発症する以前に頭痛を有した患者は、内頚動脈解離では片頭痛が18%、緊張性頭痛が51%、椎骨動脈解離では片頭痛が23%、緊張性頭痛が42%であった。動脈解離発症時における頭痛は内頚動脈解離で68% (頭痛の先行は47%)、椎骨動脈解離で69% (頭痛の先行は33%) にみられた。突然に発症した頭痛 (雷鳴頭痛) は内頚動脈解離で14%、椎骨動脈解離で22%であった。内頚動脈解離の頭痛は、前頭/前頭側頭部に多く (61%)、持続性が73%、拍動性が25%、前外側の頚部痛が26%で認められた。椎骨動脈解離の頭痛は、後頭部が多く
(83%)、持続性が56%、拍動性が44%、後頚部痛が46%に認められた。頭痛の後、神経脱落症状が出現するまでの時間は内頚動脈解離で平均4日、椎骨動脈解離で平均14.5時間であった。
結論
頭痛の鑑別とともに頚動脈の雑音、眼症状、下位脳神経麻痺、ホルネル症候群などを伴っていないか調べなければならない。
非拍動性、軽度の頭痛が多い。
●CVT脳静脈洞血栓症
発症早期から、頭重感、頭痛がみられる。・後天的危険因子(脱水、たばこ、手術、外傷、妊娠、産褥、抗リン脂質抗体症候群、癌、避妊薬などの外因性ホルモン)
・先天的危険因子(遺伝性凝固異常症:Protein C欠損、Protein S欠損)
大脳表面を灌流した血液の主な戻り道になる上矢状静脈洞の血栓症が最も多く、次いで横静脈洞、海綿静脈洞の血栓症の頻度が多い。けいれんや局所症候が出ないと診断されることは少ないだろう。
46F、頭痛、嘔吐、麻痺で発症した例。
●中枢神経系の良性アンギオパチー
RCVSだけなら予後良好。
PRESになるとよくない。
若い人の産褥期に多い。脳実質病変がないと見逃しやすい。特に初期ではMRAでも診断がつかない。
フロアから
良性の再発性無菌性髄膜炎。頭痛、倦怠感、髄膜刺激症候を呈し、髄液では初期に内皮細胞と多形核球の増加がみられ、その後、単核球増加に変化する。
演者からのTake home message
間中D なんにせよ患者の心配には真摯に応えよう。それがトラブルを防ぐ。
(1)米田D SAHクモ膜下出血は疑うことが大切。クリッピング後頭痛にも注目。
(2)臼田D 動脈解離、CVT、RCVSに注意しよう。43F、片頭痛でCTとった4日後に再度頭痛、CT再検でSAHだったことも。
(3)池田D 第3脳室腫瘍。突然死することあり、注意。
(4)永関D 57M、頭部打撲。翌日血腫。横静脈洞の骨折だった。
(5)飯ケ谷D 真菌性髄膜炎にも注意。ステロイド使用、糖尿病。
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