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第46回日本てんかん学会出席(2日目)2日目

教育講演2日目

3-1 てんかんと精神医学的合併症

*てんかん患者の20~60%に精神症状が合併する。
*さまざまな面があり、見過ごされている。
*統合失調症 7%
気分障害 1%
人格障害 17%
神経症
など

*(1)発作周辺期精神症状;発作前駆症状、発作後精神状態、非けいれん性てんかん重積状態、発作後もうろう状態
(2)発作間欠期精神症状;神病性障害(幻覚妄想)、気分障害(うつ)、人格障害、解離性障害(偽発作)
(3)抗てんかん薬AEDの副作用
に分類。

以下はガイドラインの引用。

*(1) 発作周辺期精神症状
1)発作前駆症状
発作に前駆して、頭痛、いらいら、抑うつなどが出現し、発作が生じた後には消退する。発作発現の数分ないし数時間前から生じるが、ときに数日前より出現することもある。抗てんかん薬により発作が抑制されれば前駆症状も消失する。

2)精神発作
言語、記憶、感情、認識などの高次大脳機能の障害や、錯覚および複雑な幻覚などの精神症状を主徴とする主観的発作である。繰り返し同じ内容の発作が突然に生じ、短時間で終わるが、まれに長時間にわたって持続することもある。恐怖感は最も頻度の高い感情発作で、その強度は漠然とした不安感から極度の恐怖感まで幅がある。恐怖発作が二次性に予期不安や回避行動を惹起し、パニック障害として治療されていた例もある。発作性抑うつは短時間で消退するが、その後数日にわたって抑うつ状態が持続することもある。強制思考は状況と関連しない不合理な考えの発作性の侵入である。

3)非けいれん性てんかん重積状態
てんかんの既往のない成人に欠神発作重積が初発することがある。突然、軽い意識障害が出現し、困惑した様子で、反応性が緩慢となり、数時間からときに数日にわたって持続する。臨床症状のみから診断することは困難で、脳波検査を行って広汎性棘徐波複合の連続を確認して初めて診断がつく。ジアゼパム静注によってすみやかに意識障害と脳波所見が正常化し、必要があればその後バルプロ酸の経口投与を開始する。
複雑部分発作重積は、より意識障害が明らかで、複雑部分発作を繰り返し、発作間欠期に意識が清明に戻ることのない反復型と、個々の複雑部分発作は確認できず、反応性の低下が持続する持続型とがある。脳波検査によって診断ができ、ジアゼパム静注により発作が頓挫する。発作が抑制されたら、カルバマゼピンの経口に切り替える。

4)発作後もうろう状態
全身性の強直間代発作あるいは側頭葉起始の複雑部分発作などの発作に引き続いてもうろう状態が出現する。通常は数分間で自然に回復するか、あるいは睡眠へと移行する。ときにもうろう状態が数時間にわたって遷延することがあり、まれではあるが数日間にわたって持続する例もある。外傷などの事故を避けるために安全な環境を確保できれば、特別な治療を要さない。

5)発作後精神病状態
比較的大きな発作あるいは群発する発作後にもうろう状態から回復し、数時間~3日の意識清明期を経てから、急性精神病症状が発現する。情動が亢進し、高揚した気分状態で宗教妄想や誇大妄想が出現したり、気分変調、恐怖、焦燥、衝動行為などがめだち、ときに自殺行為に結びつくこともある。治療をしなくとも数日程度で回復することが多いが、必要に応じて鎮静などの対症的処置を行う。ときに数週間にわたって持続することがあり、精神科へのコンサルテーションが必要となる。抗てんかん薬治療に抵抗する難治例では、積極的にてんかん外科の適応を検討する。

*(2) 発作間欠期精神症状
てんかんには、発作と関連しないさまざまな精神および行動の障害が持続してみられることがある。例えば、精神病性障害、気分(感情)障害、パーソナリティ障害、解離性(転換性)障害などである。これらの発作間欠期精神症状に対する特異的な治療法はなく、精神障害一般の治療に準じる。すなわち、精神病性障害には抗精神病薬が、感情障害には抗うつ薬や感情調整薬が用いられるが、いずれも発作閾値を下げにくく、抗てんかん薬との相互作用の少ない薬物を選択する。神経症性障害に対して、ベンゾジアゼピン系薬物の長期間投与は効果がないばかりか、医原性の薬物依存を惹起したり、離脱時に発作増加の危険が生じるので、使用する場合には頓用あるいは短期間の使用にとどめる。これらの精神および行動の障害が一定期間持続する場合には、精神科へのコンサルテーションが必要となる。

1)精神病性障害
てんかんの経過中に、発作と関連せずに急性の感情症状と幻覚妄想症状を伴う精神病性エピソードが生じることがある。当初は発作後精神病状態の形で発現し、やがて発作間欠期の急性精神病性エピソードに移行する例もある。ときに発作が抑制された時期に精神病性エピソードが出現することがあり、交代性精神病とも呼ばれる。脳波検査を行うと逆説的な正常化(強制正常化)がみられることがある。てんかん焦点切除術を行っても精神病性障害の発症予防にはならず、術後に新たに急性精神病性エピソードが発現する例もある。
また、慢性的に精神病症状が持続する例もある。統合失調症と比べて陰性症状がめだたず、感情的交流が保たれ、社会的な引きこもりも少ない。このような慢性精神病性障害は、抗てんかん薬治療やてんかん外科手術によって発作が抑制された例にも生じる。
いずれの場合も、精神病症状に応じた抗精神病薬投与を行うが、各種抗精神病薬の治療効果には大きな差がないため、安全性の面から比較的副作用の少ない非定型抗精神病薬を用いることが多い。MARTA<SDA

2)気分(感情)障害
てんかんには気分変調症、非定型うつ病、大うつ病などのさまざまな気分(感情)障害が合併するが、見逃されることが少なくない。ときには幻覚や妄想などの精神病性症状を合併し、感情障害と認識されないこともある。また、慢性抑うつに加えて、脱力感、不眠、疼痛などの身体症状を訴え、不安、不機嫌、焦燥などがめだつうつ状態も呈する。
就労の困難さ、社会的偏見、支援体制の貧困さなど、患者のおかれている心理社会的要因が原因となっていることもある。
各種の抗うつ薬の治療効果には大きな差がないため、安全性の面から選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)をTCAよりも用いることが多い。SSRI は抗てんかん薬の代謝を抑制することがあるため、高用量の抗てんかん薬服用例では注意が必要である。不眠・焦燥や一過性の幻覚妄想を呈する場合には非定型抗精神病薬も併用する。重症例や自殺がさしせまった状況などでは、修正電気けいれん療法も禁忌ではない。

3)パーソナリティ障害
てんかんに共通するパーソナリティ傾向はないが、一部に自己評価が低く、依存的、逃避的傾向がめだったり、未熟で衝動傾向を示す例もある。また、迂遠・粘着的で、多書傾向があり、ささいなことにも情動的に強く反応し、ユーモアに欠け、哲学や宗教への関心が強いといった行動特徴を示す例もいる。

4)解離性(転換性)障害
てんかん発作に似た発作性エピソードを呈することがあるが、てんかん発作に特有な臨床的・脳波的特徴を伴わない。逆に、前頭葉起源の部分発作などでは、一見すると解離性(転換性)発作のように見えることがあるので注意を要する。診断には、本人および発作を目撃した人から発作時の状況と発作症状を詳細に聴取することが重要となる。ルーチン脳波検査の診断的有用性は低く、発作時の脳波・ビデオ記録は診断だけでなく治療にも有用である。解離性(転換性)障害の他にも、パニック障害、ストレス関連障害、虚偽性障害などで、同様の発作性エピソードを呈することがある。
治療の主体は心理教育と認知行動療法であるが、発作時の脳波・ビデオ記録があれば、患者および家人とともに検討し、真のてんかん発作と異なることを指摘し、非てんかん性発作で抗てんかん薬治療や緊急受診の必要がないことを理解してもらう。医療者側も無用な介入を避けて二次的疾病利得を強化しないようにする。このような発作性エピソードが真の発作と誤られ、複数の抗てんかん薬が多量投与されている例では、薬物の整理・減量が発作性エピソードの改善に結びつく。
偽発作は、発作が長いのにチアノーゼが出ない、ゆっくりはじまり終わる、発作後もうろう状態がない、発作中閉眼、眼けんに震戦、強制開眼に抵抗、などの特徴がある。

*(3)抗てんかん薬による精神症状
治療のために用いた抗てんかん薬が、精神病性障害や気分(感情)障害などの精神医学的合併症の原因となり、見過ごされていることがある。抗てんかん薬による精神および行動の障害を予防するためには、強力な抗てんかん薬の追加投与や変更は時間をかけて行い、服薬コンプライアンス維持のための指導を十分に行う。

1.抗てんかん薬の添付文書には、副作用としてさまざまな精神症状が記載されている。
例えば、エトサクシミド、ゾニサミド、プリミドン、高用量のフェニトインなどでは、急性精神病症状が惹起されることがある。またベンゾジアゼピン系抗てんかん薬では、離脱時の急性精神病症状がある。一般に、抗てんかん薬の離脱が契機となって、発作後精神病が発現することがあり、強力な抗てんかん薬を急激に高用量を投与した際に、交代性精神病が生じることがある。

2.抗てんかん薬による気分障害も報告されている。フェノバルビタール投与により、うつ状態や精神機能低下が生じる。エトサクシミド、カルバマゼピン、クロナゼパム、ゾニサミド、バルプロ酸によるうつ状態、クロバザムによる軽躁状態も記載されている。

3-2 実践的な薬物療法

(1)抗てんかん薬の薬物動態
(2)終了のタイミング
(3)妊娠との関連

(1)*腎排泄型(主に新薬 LEV、GBP、TPM、ZNS)
*肝代謝型(主に旧薬 VPA、CBZ、PHT、LTG、PB、ESMなど)
*自己誘導 CBZは投与直後は急速に濃度が上がるが、3、4週で自己酵素誘導により、低下することがある。
*蛋白結合率が高い(VPA、CBZ、PHT)と、低たんぱく血症で遊離型が増え、中毒おこしやすい
*透析の影響 腎排泄型は、補正が必要

(2)治療の終了
*発作が完全に抑制され、脳波異常もない状態が5年以上続けば、終了を考慮。2年の発作なし期間で終了する場合41%が再発するが、それよりも半分以下の再発率となる。
*再発の危険因子 ミオクローヌス発作の既往、強直―間代発作の既往、投与開始後の発作
*漸減速度に関する成人のエビデンスはない。小児では半年かけることになっている。
*まとめ

  • 2年発作なし、脳波正常で減量
  • JMEでは断薬は無理だろう
  • 断薬によるメリット・デメリットを検討
  • 最終的には本人、家族にゆだねる

(3)妊娠と抗てんかん薬
ガイドライン
*最も配慮が必要な時期は妊娠前の準備期間
*妊娠前

(1)妊娠前カウンセリングに十分な時間をとる
てんかんの重篤度、生活技能に対する能力等を判定し、妊娠、出産が現実的か否かに ついて家族を含めて討議し、その可否の判断は本人とその家族にゆだねる。
(提供すべき情報には経口避妊薬に対するAEDの作用、妊娠中の発作、妊娠・出産経過、 胎児・新生児へのAEDの影響、産褥経過、てんかんの遺伝性、児の発達など)

(2)妊娠前の発作の抑制を試みる
a)必要最小限のAED単剤で試みる。Trimethadione (TMD)は使用せず、valproate(VPA)投与が必須の症例では徐放剤が望ましい。単剤での投与量の目安はprimidone(PRM)、carbamazepine(CBZ)は400mg、VPAは1000mg、phenytoin(PHT)は200mg/日以下が望ましい。
b)とくに避けるべきAEDの組み合わせPHTまたはCBZとバルビツール剤、VPAとCBZ

(3)葉酸の補充を行う (0.6mg/日)
*主治医は妊娠準備期間中、避妊を勧める必要がある。その際にはphenobarbital(PB)、PHT、CBZ、などは経口避妊薬の効果を減ずることを念頭に、50μg以上のエストロージェン含有ピルの投与あるいはその他の避妊手段についても指導すべき。
*妊娠第1期に服薬して出産した時の平均奇形頻度は11.1%(一般人口では4.8%)になる。一般に新規AEDの方が安全だが、トピナは例外。
*奇形を有する児の90%はCBZ 400mg、PHT 200mg以上に被曝していた。 VPAは投与量、血中濃度に依存して奇形発現率が増加するため、投与量は1,000mg/日以下、血中濃度は70μg/ml以下とすることが望ましい(600mg以下の被曝では奇形は観察されず、1000mg以上での奇形頻度は29.8%であった)。VPA徐放剤の血中濃度の日内変動はVPAのそれより明らかに少なく、高血中濃度を避けるためにはVPAが必要な症例では徐放剤が望ましい。
*AEDの併用で奇形発現率が著しく高まるが、とくにVPA+CBZあるいはPHT+PRM+PBのような特定の薬剤の組み合わせが奇形発現を増加させる。Zonisamide(ZNS)の催奇性に関しては、多剤併用下では常用量、治療濃度でも奇形を発現させる可能性があるが、現時点ではZNS単剤での催奇形性は明らかではない。
*以上より、断薬が不可能な症例では、妊娠前からAEDはできるだけ単剤にし、trimethadione(TMD)は投与せず、VPAが必須な症例では徐放剤を用いる。

*妊娠中
(1)定期的な通院を勧め、胎児モニタリング、AED・葉酸濃度を測定する
(2)AED投与量の増量は服薬が規則的でかつ発作が悪化した時にのみ行う。
(3)VPA、CBZ服用例では妊娠16週で血清AFTの測定、妊娠18週で超音波診断を行う。
(4)全般性強直間代発作を起こす症例では切迫流・早産に注意する。

*出産時及び産褥期
(1)基本的に通常の分娩が可能。
(2)分娩前後の不規則服薬によるけいれん発作の頻発、重積状態に注意する。
(3)出産時には児にビタミンKを投与する・
(4)授乳は原則的に可能(benzodiazepineとバルビツール剤を服用している母親の場合は新生児の状態を注意深く観察し、傾眠、低緊張、哺乳力低下などの症状があれば、母乳を控え、できれば血中濃度を測定するなどの臨機の対応をすべきである)。
(5)産後にAED血中濃度が上昇する症例ではAEDの投与量を調整する。
(6)母親の睡眠不足を避けるため、可能な場合には育児で家族の協力を求める。
*VPAの高濃度に被爆した児は、IQが低くなる可能性
*授乳とAED 原則OK、児のけい眠に注意、ZNSは母乳移行が高い。

3-3 てんかん患者のQOL

*発作の観察がまずは大切。病歴も大切だが、もともとはてんかん発作でも、今は心因性かも。家族にビデオ撮影を頼むといい。
*発作を止める 社会生活のサポート、長期治療プラン
*経済的自立 週5日、4時間働ければ生活保護を受けないで生活できる。

*治療環境

  • 発作観察
  • 服薬状況
  • 副作用 デパケンで太るなど
  • 発作以外 体育できないなど

*CPSだと、発作があっても、自分では大丈夫だと思っている。家族も、簡単な受け答えならできているので、いいと思っている。
*GTC 寝起きに発作おこりやすいので、午後からの仕事に就くなど工夫
*CPSで仕事、服薬状況、血中濃度の測定が必要 発作はわかりにくいから。
*GTCの児 プールはどうする?やってもいい。リラックスした時発作起こりやすいので、プールから上がったら、座る。

3-4 てんかんと発達障害

発達障害は、いろんな患者さんや、実は世間一般の方とお付き合いするうえで、欠かせない知識ですので、魅力的な講演でしたが、この時間は、「発作時ヴィデオ脳波検討会」に出席。

*ADHD、PDDにてんかんや、脳波異常をともないやすい。精神、認知機能が、気質、てんかん発作そのもの、2次的な障害、AEDの副作用など、どれによるものか見極める必要がある。

3-5 特殊なてんかん症候群

小児科に話が偏るので割愛。

4-1、2、3 2日目の午後は、外科適応の話が主。これも話が特殊なので割愛。

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白鳥内科医院

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2017年から、1時間当たりの予約患者さんの数を減らし、以前に比べると、はるかに待ち時間は少なくなりました。


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