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2012年神経学会学術大会速報(1日目)レクチャー第1講

I.まずは、レクチャー第1講。「あなたの患者の脳梗塞を再発させないために」

講師は豊田一則(国立循環器病研究センター脳血管内科)。

【講義内容】は、主に

  1. 心房細動を有する脳梗塞の再発予防:新規抗凝固薬の最新知見
  2. .非心原性脳梗塞への抗血小板療法
  3. 危険因子の芽をどう摘むか

緒言:脳梗塞は再発しやすい病気です。

ニューヨーク市民を対象としたコホート研究であるNorthernManhattanStudyでは、初回脳梗塞発症5年間の致死的脳卒中発症率は3.7%、非致死的脳卒中発症率は18.3%で、心筋梗塞と比べて高率であった。わが国の脳卒中データバンクに登録された脳梗塞患者8036例においては、30日以内に4.9%が脳卒中を再発し、とくにアテローム血栓性脳梗塞患者や、心原性脳塞栓症患者の再発率が各々6.6%、6.2%と高かった。

ほとんどの脳梗塞既往患者に施行可能な再発予防治療として、抗血栓療法と危険因子(高血圧・糖尿・脂質異常・肥満・タバコ)管理が挙げられる。また頸動脈高度狭窄患者など特異な頭頸部動脈疾患を持つ脳梗塞患者については、脳外科・脳血管内治療(CEAなど)による再発予防もあり、この三本柱を上手に組み合わせて、脳梗塞の再発を出来る限り阻止する必要がある。


1.心房細動を有する脳梗塞の再発予防:新規抗凝固薬の最新知見

心房細動は、高齢になると増える不整脈の一つ。日本では60才で0.5%、その後年齢とともに有病率は上昇。心臓が、アトランダムにパカパカ仕出す状態と考えてください。そのため、血の塊が心臓内にできやすくなり、それが頭に飛ぶと、大きな脳卒中(脳塞栓)になり、「ある日突然しゃべれない、半身麻痺になった、寝たきりになった」。例、小渕さん、長嶋監督、オシム監督。

予防薬というと、今までは、ワーファリンしかありませんでした。しかし、昨年ダビガトラン(商品名プラザキサ)が発売され、最初は夢の薬のように言われていました。なぜなら、服用中の方はご存知でしょうが、少なくとも数か月に一度は、効果判定のために採血が必要だったり、納豆や緑色野菜の制限が必要だったり。プラザキサは、それらの心配が全くない、しかも、出血の危険がワーファリンより少ない、というふれこみ。しかし、実際に使われるようになると、腎障害のある方で重篤な脳出血があいつぎ、今では、すっかり下火になっています。だって、高齢になれば、腎障害の方も増えますからね。

そこで出てきたのが、イグザレルト(リバロキサバン)。こちらも、ワーファリンに比べて効果は高く、出血の副作用は少ない、という話。今のところ、腎排泄が少ないため、腎障害もあまり関係ない、という解説。しかし、当院としては、発売後1年間は積極的には用いない方針です。(ほぼどんな新薬に対しも、この1年間ルールは採用)


2.非心原性脳梗塞への抗血小板療法

日米欧のガイドラインにおける非心原性脳梗塞患者の再発予防としての抗血小板薬の推奨を示す。アスピリン(バファリン)とクロピドグレル(プラビックス)は三者の全てで推奨され、わが国ではグレードAに位置づけられている。脳梗塞再発予防におけるシロスタゾール(プレタール)のアスピリンへの優越性を示した国内臨床試験CSPS2は、このガイドラインの翌年2010年に発表されたため、次のガイドラインでは、シロスタの推奨度も上がるだろう。

非心原性脳梗塞の典型例に、頸動脈狭窄が挙げられる。国内外のガイドラインでは、症候性、無症候性にかかわらず頸動脈の高度狭窄例(70%以上)に「抗血小板療法を含めた最良の内科治療に加えて頸動脈内膜剥離手術を行うこと」が推奨されている。しかしながら、推奨根拠となった臨床試験が発表された1990年代前半に比べて、近年では内科治療の質が明らかに向上した。それに伴って内科治療のみでの脳梗塞発症(再発)率が低下してきた。(年間1%程度)だから内科治療だけでかなり行ける可能性が高い。

Bleeding with Antithrombotic Therapy Study(BAT研究)は、「抗血栓療法中に発生する出血性合併症、特に頭蓋内出血の実体と対策に関する研究」(主任研究者:峰松一夫)を指す。頭蓋内出血の発症率は、抗血栓薬の内容にかかわらず、脳血管障害を有する患者がその他の患者より高かった。つまり、脳梗塞を起こした人は出血も起こしやすい。観察期間中に頭蓋内出血を起こした31例(頭蓋内出血群)、出血を起こさなかった3901例(出血なし群)の外来血圧の推移を見ると、登録時には血圧レベルに差がなく、頭蓋内出血群でのみ収縮期・拡張期とも血圧が漸増している。血圧上昇と頭蓋内出血発症の因果関係が示唆される。特に、東アジア人種は脳出血のリスクが高く、高血圧の管理がより重要だ。


3.危険因子の芽をどう摘むか

高血圧や糖尿病、脂質異常症などをコントロールする必要性を、一般市民に分かり易く伝える必要がある。

これらの危険因子管理が脳卒中再発予防に有効であることは、実は、ようやく今世紀になって示された。

PROGRESS試験は、降圧剤ACE阻害薬ぺリンドプリル(コバシル)を用いた高血圧治療の再発予防効果を示した。またSPARCL試験は、脂質異常症患者に高用量アトルバスタチン(リピトール)を用いて、PROACTIVE試験のサブ解析では糖尿病患者にピオグリタゾン(アクトス)を用いて、脳卒中再発効果を示した。

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白鳥内科医院

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