お知らせ

第31回日本認知症学会出席講演のまとめ(1日目)動画でみる認知症

I.動画でみる認知症

1.認知症をきたす神経変性疾患の神経症状と徴候

精神科のドクターも多いことを意識した神経学的所見のとり方のまとめ。神経内科医の私にとっては、学生向け講義のようで退屈でしたが、収穫も。

*アルツハイマー型認知症(AD)の診断には、局所神経徴候を欠くことが要件だ。

*変性性の認知症の代表としてレヴィー小体型認知症(DLB)、進行性核上性麻痺(PSP)、皮質基底核変性症(CBD)、そして脳血管性認知症(VaD)について学ぶ。

*VaD 開脚歩行、バレーサインが特徴。こんなにわかりやすければいいのだが。

*DLB 進行性の記憶障害、幻覚・妄想、パーキンソニズムの3つが診断の要件。パーキンソニズムは必発ではないが、大切。あればDLBを疑う。ADとの鑑別にはMIBG心筋シンチが有効。自律神経障害の検査。もちろんPSP、パーキンソン病に伴う認知症(PDD)、CBDなど、自律神経障害を伴う疾患との鑑別には役立たない。
パーキンソニズムのヴィデオ多数供覧。3徴。安静時しんせん、筋強剛(固縮)、無動(動作緩慢)。震戦は、ピルローリングは特有。強剛をみるときは、反対の手を挙げてもらうことも。無動は特に寝返りを見る。どうにか起き上れ歩けても、寝返りはうてないのが特徴。姿勢。前傾、前屈。歩行障害は、特にターンがよくない。ターンの途中で止まってしまうことも(フリージング)。だけど、障害物を越えたり、階段歩行はできる(奇異性歩行)。口舌ジスキネジアは、抗パ剤の副作用で見られることがある。入れ歯がきっかけになることも。せん妄。夜間に田植えをしているヴィデオ。こんな生々しいせん妄のヴィデオは珍しい。

*PSP 垂直性眼球運動障害。進行すると水平も。頸部後屈。前屈するパ病との違い。臨床的にはPSPなのに、剖検でADだったことがある。髄液中のAβ42の低下、リン酸化タウの上昇をみることも大切だ。リン酸化タウは、保険収載された。血清WGAも参考になる。

*CBD 左右差が鍵。肢節運動失行。エイリアンハンド。やろうとしていないことを手が勝手にしてしまう。ヴィデオでは、勝手にティシューを出してしまう、ポケットに手を入れてしまう。外来では手袋テストがスクリーニングによい。
会場から
*奇異性歩行の機序は?精神的なことが関与かと考えている。

*PDDとDLBのパーキンソニズムの違いは?(私の質問)同じこともあるし、違うこともある。(答えになってないよ~)治療が進んだから典型的な症状を見ることが減ったこともある。

*ADの神経症候、本当にないのか?そんなことはない。

2.Kluver-Bucy症候群

もともとは猿の両側側頭葉を切除して、実験的に作った症候群。人では異食症(Pica)としてとらえられる。
基礎疾患として、認知症、統合失調症など。鉄欠乏性貧血での氷は有名。認知症でPicaが出だすと「とても家では見られない」ことになるので、大切な症状。23例のなかからヴィデオなどで紹介。
AD例。消しゴム、シャンプーなど、食べやすい、飲みやすいものを口にする。
FTLD例。
脳挫傷例。カードで、食べられるもの?食べられないもの?テスト。蝶々、シャンプー「食べられる。」と。

さわってもわからず、視覚失認のレベルではない。意味記憶障害。HDSRは2-5点と悪い。感覚失語が強い。
生肉を食べたり、歯ブラシで髪をとかしたり、つまり意味がわかっていない。
*ADとFTLDに多い。

*AD 若年発症。初期から失語が認められる例に多い。LPA(logopenicprogressiveapasia)のような。意味記憶障害は、SPECTでは、側頭葉内側ではなく外側から頭頂にかけての低下がみられる。
*例 57才女性。喚語困難と失行が初発(だから純粋LPAではない)。雨が降る、の復唱、雨が、でとまる。コーヒーメーカーが使えない。その後、電車をだんしゃ。6をらく、など。音韻性錯語。60歳でリモコン使えない。63才。夫も見ても、声を聴いてもわからない。まとめ。(1)若年。(2)失語、失行、失認で始まる。(3)進行はやい。

*FTLD7例。この疾患が珍しい割に多いといえる。前頭から側頭葉外側が侵されるからだろう。
*例 62才。喚語困難で発症。甘いものが好きに。脱抑制。家族への暴力。これもPicaと関連ある症状。意味性失語(SD)タイプ。発症から5年でPica出現。側頭葉萎縮。

*VaD3例。全例左側頭葉の損傷。例74才。ICAの梗塞で、左側頭葉に梗塞。その後Pica.たわしや芳香剤。

*DLB1例。85才女性。洗剤をカルピスと間違えて飲んでしまう。錯視が関連。

*脳挫傷2例。事故で16歳で意識障害。18歳でさめてその後Pica.全失語。ヴィジュアルサッキング。なんでも口にして試してしまう。両側側頭葉障害。

*関連症状 同時期に現れる。道具をもてあそぶ。なんでも手で確かめる。実際のものをもてあそぶので、せん妄ではない。ずっと鍵をいじっていたり。「なんだかわからんよ」ものの意味が分かっていない。乳幼児の対象探索に似ている。エイリアンハンドとは、両側だし、もっと能動的主体的である点が違う。強迫的使用とは、実際には使えない点で違う。原始反射のオーラルテンデンシ―とも違う。

まとめ。側頭葉、特に左と関連のある症状だ。

3.レム睡眠行動異常症(REMsleepbehaviordisorder)

RBDの歴史は、睡眠随伴症が、すべてノンレム期と思われていた時に、REMに関連したパラソムニアとして報告されたのが最初。
夢と一致した行動がみられる。あまり進行していなければ、睡眠ステージは保たれており、行動中に起こすと「夢を見ていた」と認識でき、場合によっては夢の内容を覚えている。体をゆすっておこすと殴られることがあるから注意。声で起こすこと。

*RBD=REM sleep without atonia(PSG所見)とほぼ同じと言える。逆は真ではないが。男性高齢に多い。PD、DLB、MSAに合併、先行することも。シヌクレイノパチーにRBDは高率に合併するといえる。したがって、特発性iRBDの時点で、PD、DLBに進行するのを防げないか?という仮説がある。寝言を言うだけで長い間薬を飲むわけにもいかないが。本来RBDはRWAが必須だが、DLB診断の時に臨床的に診断されていることが問題。テレビ番組では、最初寝言だと思ったら、ぼけになった、歩けなくなった、という切り口が多い。

*RBD診断のむずかしさ。家族からの聞き取りに限界。夢の想起、内省が診断のポイントだが、これも限界。それがないからといって、否定はできないし、てんかんをRBDと誤診することも。PSGせっかくしても、判断なれていないと、睡眠時無呼吸(SAS)しか見てないことも。

*iRBDでは、夢を見たことは起きた時に100%覚えている。内容はともかく。夢の内容は、だれかに襲われて、対抗するのが一番多い。教師などだと、お説教というパターンも。20年たってPDに進展した時には、RBDはなくなっていることも。

フロアから質問。

  • どれくらいの時間続く?
    ぽつぽつ起こる。数分が多い、繰り返す。
  • どれくらい変性疾患に進展する?
    7年の外来で、50例中3例がMSAになった。
  • ひとりで寝ている人が増えました。夢の内容と、他人の観察はかなりの程度比例するので、本人の話で。
  • 夢の記憶は翌朝までのこる?
    個人差がある。
  • 嗅覚障害は?
    ともなうことが高率。
  • 治療は?(私)
    クロナゼパム0.5からせいぜい2mg。抑肝散。アリセプトの報告も。治療前にSASの合併の有無確認を、クロナセ使うなら。

4.前頭側頭葉変性症をみる

FTLDは認知症の1%といわれるが、特に65歳以下の物忘れ外来ではもっと高率。
FTD、PNFA、SDとタイプ分けするが、PNFAとLPAでPAと分類することも。(FTD:前頭側頭型認知症・SD:意味性認知症・PNFA:進行性非流暢性失語)
ヴィデオ。考え無精。「わかりません」と即答。あーそこいらにもいそー。被影響性亢進。「まねしたらいかんよ」と言ってから手を挙げると、即、手を挙げ「まねしたらいかんよ」と真似。意味が分かっていない。

*SD 左側頭葉、語義失語。右、相貌失認。両、人格、行動異常。ヴィデオ、語義失語。MMSE29点、フリートークはできる人。「利き手は?」「利き手といいますと、、。」と、とりつくろいなく。「字を書くほうの手です」「そりゃー字を書くのは右ですよ」えんぴつ。ヒントでえんぴ、まで言っても、「えんぴと言うんですか」(ADだったら「あーえんぴつ」)。「えんぴつはどれですか?」と聞いてもさし示せない。意味がわからないから。

*右SD例。77F。主訴家族朝晩の区別がつかない本人困らない。75才。知らない人に、にこにこ。76才。15pmに夕食と言ってきかない。77才。さらにマイペース。「私がだれかわかりますか?」顔を見ないで名札を見て「○○先生」。相貌失認は気づかれにくい。50歳M。MMSE28点の人。はさみの持つところ、先の部分、写真で結びつけができない。補完ができない。ものの意味がわからないから。
*呼称(ネーミング)初期ADではは保たれ、SDでは落ちる。
*高齢者のSDは特に見逃されやすい。
*進行 3年まで喚語困難3~5年行動異常5年以上全般悪い。衝動性は左で早い、右で遅く出る。相貌失認はもちろん右で早く出る。
*遅発性のFTLDでは、構成失行が出やすいので、ADとの鑑別が必要。頭頂葉も侵される?

*治療 非薬物がファースト。ことばは言語リハ。常同行動は、ルーチン化。時間が来たらしてもらう。はやめにいいルーチン化をする。
*ヴィデオ、仕事。職場への説明。FTLDだ(認知ということばは避ける)挨拶しないのは顔の判別ができないから。たばこも時間と場所をルーチン化する。
*食行動治療むずかしい。

第31回日本認知症学会出席講演のまとめ(1日目)に戻る

第31回日本認知症学会出席講演のまとめ一覧に戻る

お知らせ一覧を見る

白鳥内科医院

〒430-0814 静岡県浜松市南区恩地町192
電話:053-427-0007  FAX:053-427-0005


主な診療内容

物忘れ(認知症)外来
頭痛外来(6歳以上の小児を含みます)
パーキンソン病とその類縁疾患


診療時間

月曜日・火曜日・金曜日
9:10~11:00
15:30~17:30
土曜日・日曜日・祝日
9:10~11:00

学会、長期・短期研修など、水・木以外の休診日は、診療日時案内をご覧ください。

現在、予約は再診患者さんで若干込み合っている状態です。
恐れ入りますが、初めての方は、予約無しで、お早目の受診をお願いいたします。
お越しになる際は、必ず、時間に余裕をもっていらしてください。
認知症の診療には、多くの時間と手間がかかるからです。

また、再診で、予約の日に来られなかった方も、予約無しでお願いします。
混乱を避けるため、予約日時の取り直しは一切ご遠慮いただいております。

2017年から、1時間当たりの予約患者さんの数を減らし、以前に比べると、はるかに待ち時間は少なくなりました。


休診日

水曜・木曜
(毎週日曜・祝日診療)


トップに
戻る