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パーキンソン病の診断と治療~研究と臨床のクロストーク

1.クリニカルクエッション形式で答えるパーキンソン治療の実際

CQ1 パーキンソン病の進行を遅らせることはできますか?
おそらくイエス、
運動とドーパ製剤の組み合わせが良い。

ドーパミン製剤に対する反応には2種類がある。
SDR すぐにみられる作用
LDR 神経終末に取り込まれたドーパの作用

有名なthe Earlier versus Later Levodopa studyでも、データの再解釈がある。
実は、長期投与で、利き手で非利き手よりも、LDRが改善する。
利き手はよく使うことが、ドーパ補充療法とあいまって、運動能力が向上すると考えられている。
したがって、ドーパ補充療法+運動は、パ病をよくする。

CQ2 早期のパーキンソン治療 アゴニストで始める方がいい、というデータは沢山あるが、ドーパ剤の立場からは?
ガイドラインでは、①認知症のある患者さん ②70歳以下 ③仕事などで早急に良くする必要のある方、以外ではアゴニストで治療を始めることになっている。
しかし、EL研究でも、ドーパ剤がパ病をよくする可能性が示されている。また、300mgまでの投与では、ジスキネジアを増やしていない。それでも本当にドーパ剤から始めてはいけないのか?

ドーパ剤で治療をはじめ、悪化した時に、ドーパ剤を追加した場合に比べてアゴニストを追加した場合は、ジスキネジアの出る率が高くならない、という研究がある。

ジスキネジアの危険因子は?
若い発症
ドーパ剤大量(400m以上)
低体重
北米在住(食生活の影響??)
エンタカボン併用
女性
UPDRS part3、2?? 高スコア
これらに注意して投与すれば、いちがいに悪いとは言えない。

フロアから
服部D 場合によってドーパは400m以上投与しないと動けなくなります。呪縛にとらわれないように。
水野D 治療開始5年以内はドーパ300mgで治療できることが多いだろう。しかし、5年以上たって、ドーパの効く時間が短くなってもそれにとらわれるのはよくない。ステージを考えるべき。

CQ3 再生医療の可能性は?
3-1 再生医療でパーキンソン病はなおりますか?
いいえ、しかし見方にもよります。

現在、京都大学で、自己iPS細胞での治験が予定されている。
もちろん、ドーパ不応性の症状には効かない。
神経細胞がへって、ドーパミンの量がパ病では減っている。薬を飲んでも取り込む量が減ってしまう。ドーパ神経細胞の減少が根本だ。

そこで、ドーパミン神経細胞を移植するという事は
1、移植細胞がドーパミンを作る
2、ドーパ剤がドーパミンになるのを助ける
3、ドーパミンをためる
ことを期待できる。

3-2 ヒト胎児中脳黒質移植は、DBSより効果が低い。
iPSは、DBSを上回りますか?

胎児細胞移植の問題
多数は集められない(倫理的に日本ではすでに不可能)。
移植後ジスキネジアがおこる 純度の問題で、セロトニン作動性の細胞が紛れ込むからではないかと考えられている。

iPSのいい点
いくらでも細胞を増やすことができる。
必要なドーパミン細胞だけ移植できる。
自家移植できる。

3-3 移植後、ヒト胎児中脳黒質移植では、レビー小体様病理が出現する(プリオン仮説)。iPSでは?
頻度は低いと考えていいのでは?純度が高い移植なので?
効果が低下したら、再度移植もできる。
そもそも10年くらいしてからでる現象だし。


2.議論 ジスキネジアは怖くない? YES/NOの立場からそれぞれ

YES
2005 ドーパ製剤恐怖症から始まった
アゴニストはジスキネジアの発生を遅らせる。
しかし、一番効くのはドーパ剤だ。

パ病患者の仕事は?
発症から失職までの中央値は6年。
また、パ病の人は、そうでないひとにくらべて6年早く退職する。

その理由?
やはり運動障害が原因。
だから動きをよくしないと。

6年以上の進行期では、motor fluctuation(一般的にジスキネジアとオンオフのこと)で困っているが、 QOL悪化因子は?
非運動性ではうつ、運動性ではmotor fluctuation。

しかし、ジスキネジアがあるからといって、困っているとは限らない。
患者さんの23%は、ジスキネジアがあることに気がついてもいない。
これは、失認、無視かも。

そもそもジスキネジアは、ドーパ剤600mgで16%しかでていない。

危険因子は(再掲)?
若い発症
ドーパ剤大量(400m以上)
低体重
北米在住(食生活の影響??)
エンタカボン併用
女性
UPDRS part3、2?? 高スコア

被蓋背側が低下している人では出やすい

これらに注意。

そもそもジスキネジアはどうしておこる?
ドーパミンが低下し、セロトニンが代償的に上がるから。

治療は?
STN-DBSでジスキネジアは改善する。
早期でも進行期でも同じように効果。
逆によくならないのはWalking, Thinking, Talking(これは悪化する例も)

適切に飛び越えるべき症状では?

NO
実は患者さんも家族も怖がっている。
万が一、ピークドーズジスキネジアで、動きが良くなっているからいいや、という方でも、仕方ない、ということだし、diphasic dyskinesiaでoff時のジスキネジアに痛みを伴う場合はもっとやっかい。

介護者も困っている
人目が気になる。
特に人に見られる仕事では。
オフより辛く感じる人も。

では治療はある?
アマンタジン
DBS
この二つしか有効なものがない。

しかも、アマンタジンは8ヶ月で元に戻る。
DBSは侵襲がある。

運動機能はよくて、ジスキネジアがないのが理想。
やっぱりアゴニスト。

しかし、高齢者はドーパ剤から、とか、ドーパ剤に対する反応を見たい、経済的な要素、などあるよね。

それに対しては、ドーパ剤で初めても、追加するときはアゴニストにしましょう。
ジスキネジアの発生が遅くなるし、しかもUPDRSの動きもいい。

まとめ
ドーパ剤は必要、
でもジスキネジアは怖い、ことを念頭に使いましょう。


3.じゃ、この症例、どうされます? 30年以上のF/U例。

貼付剤にICD衝動制御障害(impulse control disorder)が少ないことにも注目を。

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白鳥内科医院

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