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ドクター白鳥の頭痛相談室(その10)

ドクター白鳥の頭痛相談室(その10)
~平成23年日本頭痛学会総会出席・覚書~

平成23年11月25日から26日まで、日本頭痛学会総会(@大宮)に出席しました。
二日間にわたり、出席したレクチャーやオーラルセッションの順に、これは、と思う内容の覚書をアップ。
頭痛に悩む方でしたら、必ず役立つ内容です。
学会に出席できなかった専門家にも、十分役立つようにまとめた力作。ただし、英語によるレクチャーは、すべてを聞き取れていない可能性があります。ご了承いただければ幸いです。

1日目

A. 頭頸部血管障害による頭痛(一般演題)
1.80歳以上超高齢クモ膜下出血患者の発症時頭痛検知の重要性;超高齢者でも、初発の頭痛からなるべく早く、かつ、意識状態の良い状態で病院に到着し、手術や血管内治療を受けると、予後が良好となりうる。

解説)高齢の方が頭痛を訴えたら、迷わず、神経内科・脳外科・救急科を受診しましょう。80歳以上の方の頭痛で、実は片頭痛だった、なんてことはありませんから。

2.錯乱型片頭痛がCADASILの臨床徴候と考えられた51歳男性例;20歳から典型的な「前兆を伴う片頭痛」のあった男性が、頭痛とともに見当識障害、逆行性健忘、異常行動があり受診。脳MRIで側頭極を含む広範囲に白質病変を認め、遺伝子解析でCADASILと診断された。

解説)CADASILは、前兆を伴う片頭痛のある方が、40歳頃から脳梗塞を繰り返し、うつ状態、認知症となる予後不良の遺伝性疾患。遺伝子解析が進み、認知症になる前に診断が付く例が増えたという1例報告。

B.薬物乱用頭痛(一般演題)
1.薬物乱用頭痛に対するSSRI(Jゾロフト)の使用経験;薬物乱用頭痛の患者さんは7割程度にうつ病ないしうつ状態の疑いがある。頭痛予防治療薬としてトリプタノールが推奨されているが、便秘・口渇などで継続できないことがある。Jゾロフトは比較的副作用が少なく、選択肢の一つとなりうる。

解説)抗うつ剤の抗痛効果は、TCA(トリプタなど)>SNRI(トレドミンなど)>SSRI(ゾロフトなど)と言われています。痛みに対する効果は弱いが、継続率が高い、という結果。しかし、薬物乱用頭痛にはデパケンを用いるのが王道です。

2.片頭痛患者における薬物乱用頭痛(MOH)発症に関与する因子の検討;片頭痛患者さんが、MOHになる因子を抽出した。片頭痛に前兆のないこと・食習慣の不規則さ・依存性に関与する遺伝子が関連していた。

解説)MOHになる方は、遺伝子で決まっているかもしれない、という結論。直接関係ありませんが、石浦章一先生の「遺伝子が明かす脳と心のからくり」など読むと、遺伝子と性格・こころ・認知の研究は今後ますます進みそうです。

C.Conceptual development and achievements in migraine translational research: What have we learned?(特別講演)
現在までに得られフォーカスされている知見(1)三叉神経から血管と髄膜へのニューロトランスミッターのリリース、(2)5-HTレセプターが役割を果たし、(3)その結果、有害なペプタイドの放出や硬膜血管・組織に炎症がおこる。これらの結果から、三叉神経血管システム(三叉神経を刺激すると脳硬膜の血管が拡張し血漿タンパクが漏れる)をターゲットに、新たな片頭痛治療薬を開発することができる。

解説)トリプタンに加え、新たな急性期治療薬が待たれているところ。

D.これからの頭痛治療―期待される予防療法の役割(ランチョンセミナー3)
トリプタンの登場で、片頭痛の急性期治療については一定の成果が上がった。しかし、急性期治療だけでは十分にQOLが改善しない例が多数ある。慢性頭痛の診療ガイドラインでは、バルブロ酸(デパケン、セレニカ)、TCA、プロプラノロール(インデラル)がエビデンスレベルが高い予防薬として掲載されていたが、片頭痛に対する保険適応がなかった。平成22年には公知申請によりデパケンの保険適応がようやく認められた。これを受けたこともあり、平成24年にはガイドラインが改定予定である。デパケンの作用機序は、CSDの進展抑制、三叉神経の炎症(したがってアロディニアにも)どちらにも効果があるようだ。片頭痛が月に2回以上あれば、予防療法を検討する。特に、(1)頭痛日数が月に15日以上ある場合、(2)片頭痛日数が月に8日以上ある場合、(3)急性期治療薬の服薬日数が10日以上ある場合、(4)トリプタンの使用タイミング・ブランド・用量を工夫しても2時間以内にじゅぶん改善しない場合は、良い適応である。年間、片頭痛患者の2.5%が慢性連日性頭痛に移行する。片頭痛の慢性化の危険因子は、(1)年齢(高齢) (2)薬物・カフェインの過剰摂取 (3)頭痛の頻度 (4)女性 (5)肥満 (6)社会階層・経済状況 (7)睡眠時無呼吸 (8)精神疾患の合併 (9)ストレスの多い生活 (10)独身、が挙げられる。これら危険因子の軽減も重要だ。

解説)昨年までは、「片頭痛をきちんと診断できるようになりましょう」というレクチャーが多かったのですが(現役の看護師さんからお便りを頂きました。「なぜ、片頭痛は緊張型(肩こり)頭痛と誤診されるのか?」)、さすがに今年は慢性連日頭痛・ 薬物乱用頭痛に関心が移ってきました。平成22年までは、片頭痛をきちんと診断できれば名医、だったのですが、平成23年からは、慢性連日性頭痛、薬物乱用頭痛をマネージできて初めて名医=頭痛専門医、という時代に移った、ということです。最近、静岡県磐田市のドクターから、薬物乱用頭痛の患者さんを紹介され、診療する経験がちらほらでてきました。しかし、地元静岡県浜松市のドクターからの紹介は1件もありません。浜松市のドクターが、きちんと慢性連日性頭痛をマネージできていればいいのですが。実は浜松市の開業医は患者さんを不注意に囲い込む傾向があるのでは?と心配になります。実際には、急性期治療薬(市販薬・処方箋薬ふくめ)の使用頻度を確認されることなく、トリプタンやロキソニン、クリアミンを処方され、医原性の薬物乱用頭痛となっている方をしばしばお見受けするからです。開業医のみなさん、いえ、大病院の先生も、頭痛頻度が多い時は、ぜひ当院頭痛外来に紹介してください。

※閑話休題。このあと、気分転換に鉄道博物館を見学に行きました。おたくではないので、SLを見てもピンときませんでしたが、0系新幹線と当時のプラットフォームの再現には、なつかしくてキュンとなりました。静岡駅前のレストラン・デンマークに父親に連れて行ってもらい、広いガラス窓にはりつき、猛スピードで通り過ぎるひかりや、到着・出発するこだまに見とれていた感覚を思い出します。

E.「脳脊髄液減少症」から「脳脊髄液漏出症」へ(教育講演)
低髄液圧性頭痛は、国際頭痛分類(ICHD-2)の7.2.に示されている。脳脊髄液の漏出に起因して起立性頭痛を生じ、項部硬直、耳鳴、聴力低下、光過敏、悪心などを伴うことがある病態である。しかし、髄液圧が低くない・起立性頭痛がさほど明らかではない例の指摘などから、脳脊髄液減少症という病態が考えられるようになった。しかし、未だに診断基準がはっきりしない。そこで、さらに、CT-ミエログラフィーで髄液の漏出が明らかな例を全国で集積し、脳脊髄液漏出症の臨床像を明らかにしている最中である。途中解析では、起立性頭痛を主訴とする患者の中に、脳脊髄液漏が原因と考えられ、(1)受診までの日数は中央値18日、(2)発症時期が明確、(3)原因: 外傷(交通事故やそれ以外)、腰椎穿刺、重労働、特になし、(4)頭痛の性質: 安静臥床で改善(100%)、脈打つ、締め付け感、首のこりから後頭部痛、(5)体位変換で頭痛が変化(座位・立位から頭痛まで中央値2分)、(6)随伴症状: 吐気、項部硬直、上背部痛、倦怠感、めまい、歩行困難、を示す例を確認できた。(100例中16例)

解説)むちうち症・交通事故との関連から、日本では診断・治療が迷走した感のある脳脊髄液減少症。今回の発表でも、CT-ミエロで髄液漏出のはっきり確認できる例と、できない例で、症状に差は認められないとのことで、病態に迫るには、まだ紆余曲折がありそうです。ちなみに講演の日本医科大学・喜多村先生は来年の総会の会長です。それまでに新たな知見を得たいところでしょう。

F.その他の2次性頭痛(一般演題)
1.頭痛発症数日後にMollaret細胞を認めた再発性無菌性髄膜炎の一例;53歳の女性。14年間に計6回の無菌性髄膜炎を発症した。髄液にMollaret細胞を認めた。

解説)めずらしい症例の提示。単純ヘルペスや膠原病と関連があるそうです。

2.脳血管攣縮の時間が特定できたReversible vasoconstriction syndrome(RCVS)の一例;55歳女性。雷鳴頭痛にて受診。MRAにて皮質性クモ膜下出血を認めたものの、脳血管狭窄は認めなかった。翌日CT血管撮影をすると、狭窄所見があり、RCVSと診断した。脳血管攣縮は短時間で起こりうる。

解説)RCVSの典型的な症状は、20-50歳の女性が突然の(数秒から数分)強い頭痛で始まり、吐き気や嘔吐があることも。攣縮を起こした脳動脈の灌流域に見合う視覚異常や片麻痺、構音障害、失語、失調等の症状を伴うこともあります。激しい頭痛で脳動脈瘤が発見できない時は、この疾患も考えましょう、という一例。

G.片頭痛4(一般演題)
1.片頭痛予防におけるプロプラノロール(インデラル)とカンデサルタン(ブロプレス)の比較研究;降圧剤のインデラル、ブロプレスともに、高血圧のない片頭痛患者に対して血圧を低下することなく、発作の予防効果があった。

解説)当院では、ブロプレスは高血圧のある方に予防薬として使用しています。インデラルはこの研究では10mgを1日3回使用。毎日3回服用するのは面倒ですね。1日1回の徐放錠は60mgしかなく、ふらつきがでそうです。さらに、片頭痛の方は、気管支喘息を合併することが多く、その場合は使用禁忌です。

2.低用量プロプラノロールによる片頭痛治療の有用性;海外ではインデラル80~240mgが推奨されているが、一方本邦のガイドラインでは、20~60mgが推奨されている。過去インデラル1日20~40mgを投与した(片頭痛934例中)32例の検討した。1か月目に頭痛は減少しており、2か月目も効果は継続していた。

解説)インデラルに関しては、ダブルブラインドで本邦の知見を確立してほしいところです。また、この演題は、片頭痛治療で有名な竹島先生の施設の若いドクターの発表。当院でも年間1000例ほど片頭痛を診断・治療しており、数では匹敵していることがわかりました。ひとりで診ている私が疲れるわけです。

H.Ten things everyone needs to know about headache medicine! (イブニングセミナー)
頭痛診療で知るべき10項目 (1)どの国でも、頭痛は痛みの主な原因で、主要疾患。WHOによると、日常生活に支障をきたす疾患Top10のうち、頭痛は女性では第5位。コストもかかっている。米国では3600万人が片頭痛もちで、年間200億ドルかかる。 (2)頭痛診療は、頭痛もちの方を救うことができる。2次性頭痛の診断治療も大切。 (3)片頭痛は、頭痛の科学を牽引する存在。片頭痛は、三叉神経血管の炎症、Cortical spreading depression(CSD)の関与があり、脳に原因のある病気だ。 光過敏も科学的に解明されている。 (4)片頭痛治療の重要性は、疫学から明らか。片頭痛は13%の方が罹患しており、ほかの病気に比べて多い。片頭痛のある方の1年後は、90%が継続しており、3%の方は慢性片頭痛に移行している。逆に、治る方は3%しかいない。 (5)片頭痛治療はエビデンスに基づいて行う最良の治療。片頭痛マネージメントは、通常、急性期治療・予防・行動療法・共存症の治療があげられ、症状の進行を抑えている。特に急性期は、トリプタンの時代になり大きく進歩。予防療法の最適化もレベル分けされている。なぜ予防が大切かというと、脳梗塞のリスクは4倍、心筋梗塞・狭心症のリスクも2~3倍に増えるからだ。 (6)興味深い一次性頭痛。三叉神経・自律神経性頭痛(TAC)という概念。TACとは必ず片側性の自律神経症状をともなう頭痛。ICHD-2の3.1 群発頭痛(CH) 3.2 発作性片側頭痛(PH) 3.3 SUNCT(結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作) 群発頭痛・発作性片側頭痛・SUNCTを比較すると、痛みの程度・支障度はその順で悪くなる、頻度は増える(SUNCTで1日1~90回)、持続時間は逆に短い(CHで15分以上、PHで2~30分、SUNCTで1分)、自律神経症状(結膜充血・流涙・鼻閉・鼻汁など)は増える、という特徴がある。 PHはインドメサシンの効果があるが、SUNCTはほとんど薬が効かない。 (7)注目すべき二次性頭痛。一次性労作性頭痛は、5分から48時間続く拍動性の頭痛で、身体活動で誘発される頭痛だが、必ずクモ膜下出血、動脈かい離を鑑別すべき。咳嗽性頭痛は、1秒~30分間続く、突発性の頭痛で、咳・いきみで誘発される。40%は症候性であり、その大半がアーノルド・キアリ奇形I型に起因する。それ以外の原因は、頸動脈または椎骨脳底動脈疾患と脳動脈瘤がある。 一次性(良性の)咳嗽性頭痛は通常両側性であり、主に40歳以上の患者に起こる。 低髄液圧症候群のことも。インドメタシンが有効。 下垂体腫瘍頭痛。腫瘍が大きくなると、鞍隔膜が破れるので、逆に頭痛は止まります。しかし、鞍隔膜が破裂すると、視神経を圧迫し、眼がかすんだり、視野が欠けたりしてきます。 (8)頭痛診療の未来が明るくなる新たな治療薬。CGRPは強力な血管拡張作用があり、CGRP受容体拮抗薬(Telcagepant)は、ゾルミトリプタンと同様の効果があった。脳梗塞や狭心症のある方でも使えるのが特徴。CSDを阻害できるかどうかは新規治療のスクリーニング検査に利用しうる。A型ボツリヌス毒素(筋緊張をとる注射剤、しわ取りにも利用されている)は、慢性片頭痛に有効。 (9)頭痛診療は神経学の一部。片頭痛の方の脳血管を死後調べると、強い動脈硬化が認められる。 (10)片頭痛はいつか必ず治癒する。独立宣言のジェファーソン、夢診断のフロイト、種の起源のダーウィンなど、有名人にも片頭痛は多い。40歳男性、片頭痛もち。右口唇と左手から左側全体のしびれが出現。右椎骨動脈解離をおこしたのち、片頭痛が治癒した例がある。頭痛の発生源が失われたと考えられる。だから片頭痛の治癒は可能。有名人も、治療薬がほしかったに違いない。

解説) 最後の力を振り絞り、18時15分から英語のセッション。頭も体もくたくた。このあと懇親会に出て、ホテルで休みました。認知症学会の前に体調を崩した事務長がまだ回復せず、心配も続いていましたし、とてもばてました。

【参考】
PH、SUNCTの診断は、 頭痛大学を参照のこと。

2日目

I.片頭痛の非薬物療法: 認知行動療法やバイオフィードバック(生涯教育セミナー 上級)
片頭痛に代表される慢性頭痛の患者は、心理社会的ストレス、うつ病性障害、不安障害などの精神疾患を背景にすることが多い。痛みの悪循環があると考えられる。心療内科では、片頭痛の治療として(1)身体的(薬物と生活指導) (2)精神的な薬物療法 (3)心理療法、を用いる。「痛みがもっと悪くなる」「自分は痛みに対し無力」「痛みに対しなにもできない」という片頭痛患者が陥りやすい考え方(認知)に焦点を当て、認知療法を行う。バイオフィードバック療法、自律訓練法、筋弛緩法など、リラクセーション法も試みている。インテリジェンスが高いが、性格がネガティブでストレスと痛みが関連していると自覚している患者、小児や妊婦には適性があるだろう。

解説)現実には、外来でこれらの治療法を用いるのは、困難です。しかし、患者さんには、「頭痛日誌をつけるのは、認知行動療法のひとつですよ。」と声掛けをするようにしています。ぜひ、頭痛日誌(ダイアリー)をご活用ください。「体重を記録しているだけで、体重が減りやすい」のと原理は同じと考えています。

J.新たな慢性頭痛診療ガイドラインへ向けて(シンポジウム2)
1.ICHD-2は診療の「マップ」、診療ガイドラインはおすすめ度を明示した「旅行案内」である。

2.片頭痛に関しては、予防薬に関して充実させる予定。片頭痛があることで、女性はMRI上4倍脳梗塞が増え、ピルを服用することにより7倍、喫煙で9倍、喫煙とピルの両方で10倍に増える。したがって、予防療法を普及させることは重要だ。

3.バルブロ酸(デパケン・セレニカ)のガイドライン(暫定版)が公開されている。大人では有効性が確立している。しかし10歳以下の小児での有効性は証明されていないので、脳波を取るなどの慎重な対応が必要。

4.緊張型頭痛。急性期にはイブプロフェン、アセトアミノフェン(カロナール)が有効。慢性期にはバイオフィードバックやリラクセーション法が有効。ボツリヌス療法も有効。

5.群発頭痛。TACとしてガイドラインをまとめる予定。SUNCTはSUNAを含めた概念としている。ラモトリギン(ラミクタール)が有効との報告があるが、本邦ではまだ不明部分が多い。

6.薬物乱用頭痛(MOH)。ICHD-2の付録として、2006年に診断基準が改定されている。MOHと区別がつきにくい慢性片頭痛は、「1ヵ月に15日以上の頭痛が3ヶ月以上続く。少なくとも 3 ヵ月にわたり,月に8日以上、前兆のない片頭痛の痛みの特徴と随伴症状がある。トリプタンが効果ある。薬物乱用頭痛がない。」と定義された。これらに基づき、治療のガイドラインを試みている。

7.小児の頭痛。急性期治療は、イブプロフェン、アセトアミノフェン(カロナール)、ゾーミック、イミグラン点鼻も含めて有効。予防にはトピラマートが有効と考えられる。

解説) 前回のガイドラインから5年がたち、そろそろ改定時期です。間違いなくガイドラインで頭痛診療は進歩し、この5年間で頭痛外来も各地にできました。当院もその一つです。その中で、当院の頭痛外来の特徴は、薬物乱用頭痛の治療に強いことです。現在、頭痛学会の関心は、薬物乱用頭痛と、薬物を中止しても改善しない慢性片頭痛の治療に大筋むかっています。学会に足並みをそろえたつもりはありませんが、他院の頭痛外来に比べてもかなり患者さんの多い中で、ごく自然に問題点は同じだった、ということだと認識しています。精神学的なアプローチが必要になるのも、予想の範囲内。特に、小児の場合は、診察とアドバイスで簡単に治る場合と、不登校などの社会不適応を伴い難治の場合と、ふたつにはっきり分かれる傾向にあります。発達障害をともなうことが強く疑われる場合は、現在、子どものこころの診療所に紹介しています。しかし、頭痛そのものの診療はどうすべきか迷いがあったので、この点を、小児頭痛の大家、筑波学園の藤田光江先生に質問しました。「心理的要素が強ければ、小児心理の専門家で診るのが望ましい。」と回答を得ました。「それに比べれば、片頭痛の治療は簡単でしょ」と、お答えになりましたが、いえ、片頭痛の治療もしばしば難渋することがあります。誤解なきようお願いします。

K.薬物乱用頭痛(MOH)から見たバルプロ酸製剤の片頭痛予防効果 (ランチョンセミナー6 その1)
MOHは、有病率1%とされ、片頭痛、緊張型頭痛に次いで、3番目に多い慢性頭痛です。しかし、特に頭痛外来では70%以上との報告もあり、きわめて率が高い。3年間で125例のMOH患者さんが来院し(註:横浜の大病院からの発表ですが、当院のほうがはるかに症例数は多いです)、女性に多く、もとの頭痛は片頭痛ないし緊張型頭痛との併存で60%程度、乱用期間は半年から最長30年、原因薬物は市販薬が70%、単純鎮痛薬(ロキソニンなど)が20%、トリプタンが10%。(1)原因薬物の即時中止(やめないかぎり予防薬に効果が出ない)、(2)薬物中止後の頭痛に対し、ほかの救援薬を投与、(3)予防薬の投与、の治療を行った。予防薬としては90%デパケンを用いた。結果、122例で即時中止ができ、平均10ヶ月の観察期間で再発はなかった。中止できなかった方は精神疾患の併存が認められた。

解説)これが今回私が一番聞きたかった演題。予防薬に多くはデパケンを用いたのは、経験的に一番効果が感じられたからとのこと。これは私の経験とも一致。また、精神疾患を伴う方も含め、かなり即時中止可能例が多いため、その秘訣を質問。「一般の方向けの本を待ち時間や、初診の時にお貸しして、教育を徹底することが効果があり、一番大切」との回答。これも私の経験と同じ。私の場合は、オリジナル資料を待ち時間に熟読してもらうようしています。逆に、違いは、(1)デパケンの使用量。200mgを投与し、(2)乱用頭痛が治癒する1週間の間は、原因薬物以外の救援薬(頓挫薬)を処方している点。当院では最初から400mgの投与としていますが、これは経験的に400mgだと、3日程度で乱用頭痛が治癒し、その間、3日くらいなら救援薬を必要としない方が多いからです。この点を質問すると、200mgでも3日間くらいで楽になる方もいるし、ほかの救援薬の薬物乱用になってしまった方はいないそうです。成績が良さすぎる点に、いささか疑問を感じましたが、デパケンがMOHに有効なことは間違いないと言えます。

L.てんかん専門医から見た、バルプロ酸製剤の薬物動態と安全性 (ランチョンセミナー6 その2)
バルプロ酸の徐放剤には、セレニカRとデパケンRとがある。セレニカの方がより徐放効果が高い。今後片頭痛に対する効果の違いを検討する必要ある。妊娠中の服用が奇形の頻度を高めることが知られているが、てんかん患者さんの研究で1000mg以下であれば、おおきな問題はないことが示されている。児のIQへの影響も、1000mg以下では問題ない。 投与量は1日1000mg以下、血中濃度は20~50μg/mlが目安。

解説)片頭痛は妊娠可能女性の患者さんが多いため、デパケンの使用には気を使います。しかし、片頭痛で用いる量(通常400~800mg)では、必要以上に神経質になる必要がないことを教わりました。しかし、原則的にデパケン使用中は、妊娠は避けていただくのが当院の方針です。また、セレニカの使用は、今後の検討課題の一つです。

M.難治性顔面痛の診断と治療(シンポジウム3)
1.外科的治療により著しく改善する顔面痛は、三叉神経痛である。三叉神経を圧迫する血管を移動することにより、ただちに痛みが消失する。しかし、文献上、手術にて0.3%なくなる方があり、聴覚障害が数%と、無視できない。診断で注意する点は、三叉神経第1枝のみの三叉神経痛は少ないこと、帯状疱疹の感染である。

2.典型的三叉神経痛は、50歳以上で、2枝、3枝の領域に好発する。やや女性に多い。顔面への軽度の触覚や顔筋の動きで誘発され、口唇周囲にトリガーがあることも多い。初回治療は、CBZ(テグレトール)で80%効果がある。めまいや眠気に加え、まれだが血球減少が認められることがある。バクロフェン(リオレサール)、プレガバリン(リリカ 投与には漸増が必要)、ガパペンチン(ガバペン)なども試される。片頭痛患者に併発した時は、片頭痛も増悪することがあるが、CSDが起こりやすくなるからと思われる。

3.バーニングマウス症候群は、閉経後の女性に多い、食事中だけ改善する原因不明の口腔痛。

4.難治性の顔面痛のときは、CTやMRIの撮影領域を再検討してみる必要がある。

解説)顔面痛は、雑多な疾患が入り混じり、診断が困難な時があります。炎症や腫瘍が隠れていることもあり、難治の時は慎重な対応が必要

N.群発頭痛およびそのほかのTAC1.2.(一般演題)
1.女性の群発頭痛;近年女性の群発頭痛が増えている。16例を解析し、妊娠中には出現しない、月経時にひどくならない、ことがわかった。

解説)女性の群発頭痛特有の誘因はないようだ。

2.ヘルペス角膜炎にSUNCT様の頭痛発作を認めた一例;65歳男性。急性帯状疱疹による頭痛が、SUNCTの痛みに類似していた。

解説)SUNCTは原因不明とされるが、帯状疱疹ウィルス感染が関与している可能性がある。

3.群発頭痛9例におけるナラトリプタン(アマージ)の予防効果の検討;アマージは、半減期が5時間半と長く、夜間の群発頭痛の予防に効果があるかもしれない。7例で効果が認められ、頭痛発作の2時間前の内服が効果的なようだ。

解説)デパケンやワソランが無効の群発頭痛に、試してみようと思います。

4.群発頭痛に対するべラパミル(ワソラン)の予防効果;50例の群発頭痛で検討。60%で効果あり。

解説)当院では、デパケンとワソランを併用しています。竹島先生もそうしているとコメントされていました。

O.Headache education-A Case for a Better Way!(ポストコングレスセミナー)
頭痛教育には、講義よりも小グループによる症例検討が有効である。神経学の父、シャルコーも歴史的に火曜日の朝を症例検討会にあてていた。

解説)本当にその通り、普段出席できる症例検討会が浜松にあるといいです。開業医は時間の制約が大きいのですが、なんとかしたいところ。

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白鳥内科医院

〒430-0814 静岡県浜松市南区恩地町192
電話:053-427-0007  FAX:053-427-0005


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内科、神経内科、小児科、リハビリテーション科


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