お知らせ

豪＆淳　東京だより

「キョービの高校・中学生事情」を教えてくれる、甥からのお便りです。豪＆淳は、子供のいない院長のお友達みたいなもの。毎月交互に話題をお送りします。

高校三年生、豪

■卒業

◆付属高校なので卒論を◆

三年間の（時間的にも距離的にも）長い通学を経て、どうにか卒業そして進学も決まり、今では卒業式を待つ日々である。
さて僕の通う高校では早稲田大学の付属校ということで、高校にしては珍しく卒論制度が設けられている。
僕はベリンスキーという十九世紀のロシアの文芸批評家――といってもわからないだろうがドストエフスキーの文壇デビューの立役者と言えば少しは想像していただけるだろうか――の社会思想について、ヘーゲルからマルクスへという文脈で論じた。
興味深い事実に、ベリンスキーが、つまりドストエフスキーが文章を書いた十九世紀前半のロシアの文盲率は九十％を優に超えていたということがある。

◆稀有な庶民「ベリンスキー」が文学を共通言語にして革命に影響を与えた◆

そもそも当初僕がこのテーマを選んだ理由はロシア革命における作家の役割について関心を持ったためであった。しかしこうしてみると読書というのはわずかなブルジョアにのみ許された行為だったことがわかる。ではなぜ作家が革命に対して影響をあたえうるのか。そのことを考えるにはベリンスキーが当時の知識階級――すなわちインテリゲンチャにおいて稀有な雑階級人、つまり庶民であったことに目を向ける必要がある。
なぜならベリンスキーは、彼の死後形成された雑階級知識人という、文学をその共通言語とする新たな階層の先駆だったのであり、彼らこそは、その後の革命運動の主体となったのである。