お知らせ

鵠通信 ― くぐいだより ―　第76号

大学の同窓会に
出席してきました。
そこで発見したものは？

ノーベル物理学賞受賞　益川先生の特別講演で発見！
名古屋大学医学部学友会　第百回大会に出席

あなたは母校の同窓会に出席していますか？
九月二十六日（土）休診させて頂き、記念すべき百回大会に出席してきました。
当日午前中、新築された名大病院の見学ツアーに参加。
午後からは、場所を移し、お目当てのノーベル賞受賞、益川先生（名古屋大学理学部卒）の特別講演を拝聴してきました。
益川先生は、十年ほど前に、脳出血をわずらったことがあるそうですが、それでもあの元気ですから、さすがです。しかも、身長百五十cmくらいしかない、小柄な先生なんです。びっくりしました。理論屋サンなのに、理路整然と話すのはお好きでないらしく、あちらにとび、こちらにとび。
それをあなたのために、以下要約（かなり意訳）。

◆生活が豊かになる行動の秘訣◆
科学は、いまや疎外されている。
自分が子供だったころは、ラジオの裏蓋をあければ、その仕組みを理解することが可能だった。今では電化製品も複雑になり、「スイッチを押せば、使える」程度の、浅い理解しかえられない。だから、ものごとを深いレベルで教えたり、理解しようとする努力をせず、とりあえずテストで点数が取れればいい、という風潮になっている。

■一つのことを深く考えると、他にも応用できる
しかし、それでは応用が利かない。たとえば、ファーブル昆虫記に書かれているエピソード。
蚕にタバコモザイク病がはやり、養蚕業が大打撃を受けたとき。微生物学者のパスツールが派遣されてきた。「どんなに蚕に詳しい学者が来たのだろう？」とファーブルが見ていると、繭を耳元で振って、音がしたのにびっくりしている。つまり、繭のことなど何も知らない人が派遣されてきたのだ。そのことにファーブルは驚いた。しかし、微生物に関する基本的な知識をパスツールは持っていたため、タバコモザイク病を撲滅することができた。基本的知識、理解は応用がきくのだ。

■よく考えないと、あのエジソンでも損をする
また、発明王エジソンが、電力会社を作ったとき。直流電流で電気を供給した。一方で、交流電流を売る会社もあった。競争に勝ったのはどちらか？交流電流の電力会社だった。なぜなら、需要がふえ、電力をさらに大量に供給するとき、直流だと送電線（銅線）を太くしなければならない。これは簡単にはできない。一方、交流は、銅線の太さはそのままで、大量に供給することができる。原理原則を理解していれば、最初からわかっていたことだった。エジソンは、実験屋サンであり、理論を十分に理解していなかったため、失敗した。このように、理論を深く理解していることは、実用的にも役立つ。
科学者は、原理原則に忠実であるべきだ。テレビの超常現象なんかを見て、「楽しめればいい」などと言っているようではいけない。「違うものは違う」と発言し、市民に伝えよう。たとえばお医者さんだったら「この病気はこうすれば治ります」「これは今は治せませんが、あと何年くらいで治療法が見つかるでしょう」などと、伝えてほしい。患者さんが、まがいものに騙されないように、しっかりと科学的到達点を、教えてあげることが責務だ。